タイミングは必ずくるから、自分を信じて突き進む!子育てしながら会社員として農業をする暮らし

飯盛 加奈子さん

京都市の出身で、現在は滋賀県野洲市在住。小学生と中学生の3人の母。介護士として10年ほど働くが、子育てとの両立に悩み、家族で実家近くの滋賀県へ引っ越す。叔父が経営する近江園田ふぁーむを手伝う中で、作物を育てることが楽しくなり農業を始め、会社に野菜部門を立ち上げる。現在は農家4年目で、8時から16時半まで畑で働くスタイルで、家族の時間を大切にしつつ、日々チャレンジしながら自由に野菜を作っている。

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今の暮らし

朝は毎日5時半に起きて、家族それぞれで家事を役割分担しつつ(私がお弁当を作ってる間に上の子2人で洗濯物を干してくれる。1番下は朝勉強5分~10分)7時半には家を出ます。8時から16時半まで畑ですね。午前中は、出荷や梱包などをして、後は畑作業。仕事が終わったらすぐ下の子2人を学童に迎えに行って買い物、ご飯の支度です。週3日は夜に子どもたちの剣道についていって、日曜日は基本的に休みなのでみんなでお出かけしたり長男のサッカーの試合見に行ったり。マルシェなど出店があるときは夫や実家に子どもを見てもらっていて、のびのび楽しくやらせてもらっています。

以前にはなかった子供とちゃんと向き合える暮らしができているので、今は本当に働きやすい環境です。農業っていうと休みなしで朝から晩まで働くイメージがあるけど、私のような生活ができるのは、会社っていう組織だからこそできる働き方だと思います。仕事や家の事で上手くいかなくてイライラする時もありますが、畑に出て土に触れ種を撒き、風を感じていると不思議と心が本当に落ち着くんです。笑顔になれるんです。

人にかかわる仕事を求めて介護士へ

幼少期は街中で育ったのですが、母方の実家近くに田んぼ(いま働いている会社)があり、ちょこちょこ遊びに行っていました。トラクターに乗せてもらったり、田植えなどを手伝ったり、なんかいいな~とは子どもながらに思っていました。

学生の頃は学校の先生になりたかったのですが、大学受験で失敗して1年間アルバイトをしながらふらふらしていました。資格をとれて、なおかつ人と関わる仕事がいいなと思っていた時に、介護保険が始まった時期で介護業界が盛り上がっていたこともあり、介護士の道へ進みました。実際働いてみると、おじいちゃんおばあちゃん達と関わるのが楽しくて、結局10年働きました。体力的には大変な仕事でしたが、若かったので夜勤明けに遊びに行ったりもしてましたね。

介護と子育ての両立に悩んだ

でも、子供が生まれるとなかなかそうはいかなくて、どの子も産まれて半年くらいで保育園に預けてたので病気のオンパレードで心身とも疲弊していました。職場の人はすごく理解があったのですが、迷惑をかけているという自分に劣等感みたいなものを覚えるようになってしんどかったですね。子どもを病院に連れていって、すぐ治る薬をくださいってばかり言ってました。

そんな中で、「介護するのもいいけど、育児が全然できていないじゃないか。子どものために何をやってるんだろう。」と思えてきたんです。3人目が生まれてからも、1年くらい働いたのですが、体力的にも精神的にもしんどくて…。夫と相談する中で、ちょっとゆっくりしようかと提案してくれたんです。

介護士の資格があるので、また働きたくなればどこでも働けるし、無収入になるのは不安でしかなかったですが、夫の収入もあるし、何よりほんとうに疲れ切っていたので、辞めることに後悔はありませんでした。ちょうど長男が小学生に上がるタイミングでもあって、新しい生活を求めて私の実家近くに引っ越すことにしました。(夫は滋賀から当時大阪まで通ってくれてました。現在は京都勤務。)

会社の畑から見た景色

農業の楽しさに目覚める

引っ越してからも、叔父の会社にはちょこちょこ顔を出していたのですが、段々と農業も面白そうだなと思えてきて、私にもできることはないかと少しずつ手伝い始めました。人好きな性格や、引っ越して知り合いが少ないこともあって、新たなつながりを求めて(仕事としてではなく趣味的に)マルシェに会社の加工品などを出し始めたのです。

その時お客さんに「今日は何があるの?」「次はいつ出るの?」と聞かれたり、どんどんコミュニティが広がっていくのがすごい嬉しくて達成感があったんです。その時に、これを仕事にできないかなと思い始めました。

野菜を作らせてほしいと懇願

ちょうど仕事の休憩時間にスタッフと野菜も育て始めていて、野菜ができる・作る喜びに目覚めていたこともあり、叔父である会長に「会社で野菜をやらせてほしい」と直訴しました。当時は米と麦と大豆を120町(東京ドーム約24個分)で生産していたので、まずは5反(24分の1)くらいから、少量多品種で無農薬でやりたいって言ったもんだから、もう大反対でしたね。私は農薬にアレルギーがあったので、せっかくなら無農薬でやりたかったのですが、会社では当時無農薬栽培はやっていなかったので、収穫量や売上げなど反対される要素が多すぎでした。

さらに私自身も野菜作りを習ったこともなかったし、社内に野菜作りの技術がある人がいる、機械もほとんど揃ってると言う事もありいける!という自信がありました。考えが甘いと言われたらそれまでですが行動力があると言ってもらえると頑張れる。俄然ヤル気が出るタイプです。

とにかくやってみたいという気持ちがあったので、「5年間は待ってほしい、その間に1千万の売上を上げるから」と上司に掛け合いました。自分がどれだけ世の中で通用するのか。野菜を売ると言うより自分を売る、知ってもらう。信用してもらうという気持ちが勝ってました。

卸先も考えてなかったし、全部ゼロからでしたが『米も麦も、大豆もそして野菜もと全部やっているのは会社としても魅力的だし、会社で行ってる企業や家庭の生ゴミ・食べ残しを堆肥にしてその堆肥を使って作った作物をまた企業に納めるというフードリサイクルが無農薬栽培にも強く結び付いてくるんじゃないか。温暖化や環境についてももっと考えていきたい。』と何度も伝えなんとか許可をもらえたんです。今、思ったらなかなかの根性だったなと(笑)

自分にできることを

最初は田んぼの土なので、畑向きの土ではなく根菜は割れるし、無農薬なので虫はつくしで大変でした。社内の野菜作りに長けているスタッフを一人引っ張ってきたので、株式会社として野菜部門からその人の給料も出さないといけないし、絶対無理!と思うことも多々あったけど、社内でも協力してくれるスタッフや応援してくれるスタッフ、作業効率を上げてくれる機械が揃ってるなどの良い環境が揃っていた事とあり、やると言った手前、絶対諦めきれなかったんです。

大まかな畑作業はスタッフに任せる事で、栽培の経験が浅い私には何ができる?と考え、人好きな性格だから営業や販売など自分に自信のある事をやろうと思いました。レストランや飲食店へ飛び込み営業、ネット販売、SNSでの発信、自分が出来る事はありとあらゆることをやりました。そうすると、口コミでどんどんお客さんが増えてきたんですよね。さらに農家同士のつながりも出来てきて、凄く楽しかったです。社内の人たちも私の本気度を分かってくれてきたし、同時に売上げも年々上がっていきました。

そんな中でも私たちが作った野菜を食べたいと言ってくれる人に売るというコンセプトは絶対曲げないでおこうと実践しています。

タイミングと環境があったからこそ

なんでここまでできたのかなと振り返ると、タイミングと環境が良かったからだと思います。当時、叔父の会社に通い始めて作物を育てる喜びに目覚め、好きを仕事に出来るって最高だなと思いました。子どもも小学校に入って少し手が離れ、会社には場所も機械も全て揃っていたし、力になってくれるスタッフもいました。多分子どもがもっと小さかったらしなかったと思うし、本当にタイミングと環境に恵まれたと思っています。

今はありがたいことに売る野菜が足りないくらいになっていて、大口たたいた売上達成にも近づいてきたので、少しずつ面積や加工品も広げる段階だなと感じています。

くさつファーマーズマーケットにて

大切にしていること

自分を信じる、夢を持つ 何を言われても自分を信じ一生懸命やっていると自然と共感してくれる人、力になってくれる人が集まってくると思います。 私の事でいうと自分たちの作った野菜を食べてもらいたいとか、野菜作りの喜びを広めたいっていうことですね。夢や好きが強いと、つらくても頑張れるし、朝も早く起きて仕事行こうってなります。

一歩ずつでいいから踏み出す なかなかハードルが高いなと思えることでも、ちょっと一歩だけ勇気出して進んでほしいなと思います。やらないで後悔するよりやってみて、やっぱりダメだったって方が経験値が違う。挫折もいっぱい味わって成長、成功していくんだと思います。子どもたちにもいろいろ経験していく中で迷うときもあるけど、一歩ずつしっかり歩いていってほしいと思います。 好きな事をやりたいって言ったときに例えそれが無謀な事だとしても私は背中を押してやりたい。

お気に入り

日本野鳥の会の長靴 とても履きやすいし、田んぼの中でも動きやすい

畑の服装は着ていてテンション上がるもの。 (PatagoniaのベストやNorth Faceのウェストポーチ、収穫ハサミなど)

Instagram 気持ちのバロメーター。畑で収穫出来た野菜や美味しく作れたものをSNSにあげるとキロクにもなるし楽しくなれる♪もちろん、子供達の笑顔も毎日頑張れる気持ちのバロメーターです!

すてきなあの人

中道農園の本郷さん

仕事=遊び、の感覚で、畑にも「遊びに行ってきまーす」という感じで凄いなと思っています。私はまだそこまではいってないけど、好きだから朝早くても行こうとか、しんどくても頑張れるというのはありますね。

https://www.ocome.com/

スティルルームのちーたん

”好き”に生きていて、それにみんなが集まっている感じでとても面白い人です。自分の生き方の軸がしっかりしているので、一緒にいてすごくたのしいです。

https://ja-jp.facebook.com/cafesalonstillroom/

お知らせ

◆Instagramで日々発信しています!@kanastyle38
◆毎月第2日曜は、くさつファーマーズマーケットに出店しています!
◆近江八幡市の道の駅「きてかーな」に野菜が売っています!
◆ポケットマルシェにて旬のお野菜セット販売中!ポケットマルシェ
◆無農薬のお米やもち麦、黒大豆も栽培しています。https://omi-sonodafarm.com/