何者かになるんじゃなくて、素の自分で生きていく。仕事はそこそこ、ご機嫌な暮らし。

林 緑さん

山形県生まれ。2児の母。26歳までを東北で過ごし、結婚を機に滋賀へ。銀行やベンチャーを経て、組織に縛られない自由な働き方があっていると気づきフリーランスとなる。「はやし自由研究室」の屋号で、仕事はキャパの6割以内に抑えつつ、企画・ライター・デザイン・会計など興味があるものはなんでもしている。夫と共に貸し農園で野菜を育てつつ、ライフワークとして「#前略、ひと手間をたしなみたい派です。」という名前で、農ある豊かなライフスタイルの情報発信やコミュニティ作りをしている。

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いまの暮らし

朝起きたら、まずは庭へ。メダカの世話をしたり、朝日を浴びながら、エンジンをかけていきます。仕事はパソコンの前で座っているだけで運動不足なので、子どもたちを保育園へ送りつつ往復1時間歩くようにしています。

仕事で集中できない時は散歩したり、本屋さんで情報収集したり、ヨガに行ったり、自由にやっています。子どもが2人になってからは、家庭を円滑に回すことの優先順位が高くなり、なるべく夕方以降の体力を温存できるように、日中の仕事を調整することが増えました。夜は子どもたちと一緒に10時くらいには寝てしまいます。

土日は、畑や共同の田んぼ、ファーマーズマーケットへの出店など、だいたい予定が埋まっています。もともとぼーっとする時間がないとダメな性格なので、何もない日は大好きな映画を見たり、昼寝をしたり、思い立ったらどこかに遠出したりして、リセットしています。

収入は会社員時代の半分くらいに減りましたが、当時に感じていたストレスはほぼなくなり、不機嫌や愚痴のオンパレードもだいぶ減りました。子育て中の割には時間が自由に使えるので、総じてご機嫌に過ごせていて、家庭内平和が保たれています。怒ることはしょっちゅうですが、母親が機嫌よくいることが、家族にとって重要だなと痛感しています。

何者かになるんだと信じてもがいていた会社員時代

小さいころから目立ちたがりで、児童会長もしたし、人前に立つことが好きでした。それに祖父が経営者だったのもあり、漠然と社長になりたいと思っていました。新卒で銀行に入った当時は、何者かになるんだ、バリバリ働く人になると強く思っていました。

その頃は常に背伸びをしていて、いろんな講座や集まりに参加したり、2回転職し、ベンチャーで働いたり、働いている銀行から借金までしてビジネススクールも通いました。

でも、やりたいことなんて見つからないし、バリバリ仕事する人たちに、心も体も脳みそも全然ついていけないのです。常に、乾いた雑巾から力を振り絞るような感覚で、心のどこかで家庭は二の次の人たちに強烈に違和感を感じる自分もいて、自分の憧れと心のズレにずっと悶々と悩んでいました。

夫や子どもにじわじわと影響を受ける

そんな時、長男が生まれ、夫も農業にはまり始めたのが転機となります。当時の私は食は作業でしかなく、料理も本当に苦手。週5ファストフードでも苦ではありませんでした。しかし、料理が得意な夫が、自分の育てた野菜で料理してくれたり、こんにゃくやパンを作ったりと、食にとても愛情と手間ひまをかけている姿と日々向き合う中で、少しずつ変化していく自分に気づきます。最初は、「またやってる~、でも実益のある趣味でラッキー!」とどこか自分には関係ないと思っていました。

でも、食生活が整うと体の調子も良くなり、さらに育休で強制的に仕事から離れて、ストレスから解放され、子どもと向き合うことで、心も体も楽になっていることが分かりました。社会人になってから、朝食は胃が気持ち悪くてずっと食べられなかったのですが、この生活をしてから段々と食べられるようになってきたんです。ついには、畑で採れた紫蘇でジュースを作ったり、知り合いの農家さんの果物でジャムを作ったりするようになったのには、自分でも正直驚いています。

そして、自分の憧れは、自分の心が求めているものではないと、ようやく納得できました。正直、バリバリ仕事できない自分を受け入れるのは悔しかったですが、数年間かけて、心の声に気づき、徐々に受け入れられるようになりました。

モンゴルに一人で行って、どこまでも広がる大地とちっぽけな自分。

っと全てが一致した

暮らし方が変化する中で、働き方に関しても、一人で仕事した方があっているなとずっと感じていたので、夫の安定した収入もあることだし、自分のペースで仕事をしてみようとフリーランスになりました。今まで出会った知り合いやその紹介で仕事をもらいながら、細々と仕事をしています。

仕事で活躍する友人を見て、うらやましく思うこともありますが、それでも今の生活が一番自然体で自分に合っていると心から言えますね。何度も失敗を繰り返してようやく気づく自分の面倒くささに笑ってしまうけれど、それでも紆余曲折の経験を経ないとたどり着けなかったと思います。こう言えるまでに10年かかりましたね、長かったです。

今は、企画やデザイン、WEB制作、ライティング、動画編集、会計の仕事など、とにかく好きなものや興味があるものは何でもやってみるようにしています。好奇心旺盛で飽きっぽい性格なので、浅く広くのスペシャリストでいこうと思っていて、何か一つを極められなくても、それでよしと受け入れています。いろいろやっている状態が精神衛生上とても良いので、日々ご機嫌に仕事ができています。

結婚して”林緑”という名前になったときから、自然に関する仕事をする予感はしていました(笑)最近、自然がコンセプトの仕事をいくつかするようになってきて、心と体と名前がようやく一致したなと、にやにやしています。今はクリエイティブの勉強に力を入れていて、モーショングラフィックスもやりたいし、いつか詩集も出したいし、ドキュメンタリー映画も作ってみたいなと思っています。

大切にしていること

フットワーク命 フットワークが軽い方なので、面白い人やお店、イベントを聞いたり紹介してもらったら、とりあえず行ってみるようにしています。お喋りが好きな性格もありますが、相手が心を開きやすくなるので、まずは自分をさらけ出し、自ら胸襟を開くことを大事にしています。そのおかげで知り合いはかなり増えたと思います。東北出身で知り合いがゼロだったのに、今では滋賀にまつわる仕事もいろいろしていて、とても感慨深いです。

口に出す勇気、言い切る力 あとは、やりたいと思うことや助けてほしいことがあったら、できるだけ言葉に出すようにしています。言ってしまうと「やらなきゃいけない」という思いが自分の中に芽生えてくるのを知っているので、とりあえず言っちゃいます(笑)それに、具体的にwantやhelpを出していると相手も助けやすいので、声をかけてもらいやすいです。そういった積み重ねで、今の仕事に繋がっているところが多々あります。

仕事は常にキャパの6割以内 自分のキャパの6割以内で仕事をするようにしています。予定が狂うことが結構なストレスになるし、キャパがいっぱいになると情緒が乱れて夫や子供にあたってしまうので、無理はしません。まだ子供が小さいので保育園を何日か休んでも支障はでないし、突然の連絡にもすぐ対応できたり、インプットの時間も増えたり、精神的余裕が出て、いいことばかりです。最終的に、家庭内平和につながるので、しばらくはこのまま行くと思います。

お気に入り

以前野外映画館のイベントをやったときに、一緒にイベントしたキノ・イグルーさん(@kinoigulu)がめちゃくちゃ大好きで、彼らの紹介してくれる世界各国の映画を見るのが癒しです。オーレ・エクセルの短編アニメーションは、わたしも子どもも大好き。smallな暮らしがしたい人には「リトルフォレスト」がおすすめ。

名前の影響で、緑色のものばかりが集まります。車に椅子、名刺入れ、財布、だいたい緑色です。

すてきなあの人

食をはじめ暮らしに対する向き合い方が丁寧かつ乙女すぎて、じわじわと影響を受けています。 @hiroto0803

松本紹圭さん ”何者でもない”ということを教えてくれた人。淡々と常に一定で、しびれます。 https://note.com/shoukei/

お知らせ

こんな人たちと出会いたい!デザインやクリエイティブ全般を、私のスキルか夫のパンと物々交換で教えてくれる人。山登り仲間。セーリングしてる人。ツリーハウスを建てられそうな土地と木を保有している人。