京都静原お米作り体験プログラム2022 vol.3

文月・葉月・長月、自然との戦いと恵み、そして洗礼|主催:NPO法人スモールファーマーズ

有機無農薬の自然栽培で
種まきから稲刈りまで
自分専用の区画でお米を育てる
年間体験プログラム。

太陽のもとで汗をかき
風と水の音を聴き
お米づくりという
自然と人の営みのコラボを
四季とともに五感で辿ります。

自分で育てたお米を
自分で食べる贅沢を待ちわびる
270日のものがたり。


レポートする人
今井幸世さん

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2021年の夏から野菜づくりの勉強を始める。はじめての土、
はじめての野菜、これまで想像もしなかったたくさんの経験
と自然のふしぎを通じて、環境と状況の中にある自分を発見。
自然の摂理に沿って生き、はたらき、出会い、食べる暮らしを目指し
2022年、お米づくりに挑戦します。


文月・葉月、そして待ちわびた長月

雑草の勢い旺盛にて、土の重さに足を取られ

文月。稲刈りシーズンに向け、自分の区画をグルリと取り囲むように幅20センチ、深さ20センチの溝を掘ります。溝堀をしないと田が乾かず、地面がぐちゃぐちゃのままで稲も熟さないそうです。(そして何と言っても稲刈りの時の地面が田植えの時のようになってしまう!)この溝を他の区画の溝とつなげ、田んぼ全体で水が引くようにしていきます。

太陽の照り付ける中、鍬で田の土を掻きますが、まだまだ水をたっぷり含んだ土はどっしりと重く、すぐに横から土が流れ込んでなかなか溝になりません。それでもしっかり溝をつなげていくため、泥に足を取られながら一歩ずつジリジリと進みます。

また今年は雑草の勢いが旺盛で、先月までにあれほど抜いたと言うのに、また新たな雑草が。これも泥をかき分けかき分け、えっちらおっちらと足を進めながら抜いていきます。
重い土と水をかき分け、跳ねる泥で顔を汚し。ジージーと鳴く蝉の声を聞きながら、人はただただ地を見つめ続けたのでした。

どうにか掘った溝と生長を止めない雑草たち

いのち 対 命、生きるものたちの攻防

猪が稲を狙って山を下りてきている。そんな話が飛び込んできました。雨で地盤がゆるむと、集落を覆っている鉄のフェンスの下を掘り起こし、時にはフェンスをも食い破って侵入して来るのだそうです。

田んぼ周辺の農家さんや、隅岡さんが夜21時、そして午前3時くらいにも見回りに行ってくださったそうなのですが、その隙をぬって猪は田んぼの畔や稲を荒らしていく…。
猪が田んぼに入ると、農家さんからスモールファーマーズの岩崎さんに連絡が行き、岩崎さんもスクランブル発進で田んぼに急行。近隣の農家さんと隅岡さんたちと共にフェンスの穴を塞ぐ作業を繰り返してくださったそうです。

猪も食べて生きるのに必死。人間も実りを守るのに必死。稲も実り種をつなぐことに必死。命対命の攻防は、こうやってずっと昔から繰り返されてきたのだなあ…と思いながら、田を守ってくださっている皆さまに感謝するのでした。

猪に踏み倒された稲

広い田んぼの稲が刈られ、稲木が建つ、それはひとりではできないこと

そして長月。待ちに待った稲刈りの日!当日は台風の到来が心配されていましたが、何とか持ちこたえた空模様。稲刈りは初めてという人も、去年もやったよ!という人も入り交じりながらの稲刈りがスタート。稲を刈る人、麻紐で括る人、稲木を組み立てる人、稲束を運ぶ人、稲束を稲木に掛ける人。単身で参加している人も誘い合って作業をし、「手が空きました!手伝うことはないですか?」と声が飛ぶ。ザクザク、と鎌が稲を切る音に交じって、そんなやりとりや作業の音が聞こえます。

どんな作業もひとりでやると膨大に思え、ただただこなすことを考えてしまいますが、役割を分担し誰かと協力する、できる人ができることをやる。そうすることで猪から稲を守り、広い田んぼの稲が刈られ、稲木が建つ。改めて、農作業はみんなでやることなんだなぁ~、と実感しました。

そうやって建った稲木と、稲木に並べられていく稲を眺めながら、自分の目でこんな風景を見ることができるなんて思いもしなかった私は「あぁ~、頑張ってよかったなぁ~」と心から感じたのでした。
天日干しの期間は約1週間。その後脱穀、もみすりされたお米を手元に届けて頂けると聞き、まだ見ぬ新米に心を弾ませて帰路につきました。

黄金の稲を鎌で刈る

嵐の到来、自然の洗礼を受ける

稲刈り日、「天気が持ちこたえてよかった良かった!」と胸をなでおろしたのも束の間。台風14号はやって来ました。雨も風もこれまでにない規模と言われた台風14号。岩崎さんと隅岡さんたちができる限りの手立てを講じてくださったにも関わらず、嵐はお構いなしにその力を天日干しされた稲にぶつけて行きました。

台風一過の朝、岩崎さんたちが田んぼに行かれると、なんと稲木の半分くらいが稲ごと倒壊。鉄パイプも一部曲がってしまうという光景が広がっていたのです。

あまりの状況に岩崎さんたちも唖然とされたそうなのですが、居合わせた参加者の方と共に、地面に落ちた大量の稲束をすべて回収して、個人区画ごとにビニールシートの上へ仮置き。更にスタッフの方々も合流し、曲がった鉄パイプを解体して稲木を立て直し、もう一度個人区画ごとに稲を干す、という作業を繰り返されたそうです。そんな地道なご尽力の末、何とか復旧にこぎつけられたと、わたしたち参加者にメールが届きました。

猛烈な勢いで生え続ける雑草。何度も何度も襲来する猪。そして人の力など無いもののように叩きつけた台風…これでもかというくらいに押し寄せた自然の大波は、お米づくりはただ楽しいものではなく、人が自然とどう関わり、また戦うのか、そして共存するのか、ということを考える営みなのかもしれないな、と思ったのでした。

台風になぎ倒された稲木と稲

やってみたい!お米づくり体験

有機無農薬の自然栽培で種まきから稲刈りまで
自分専用の区画でお米を育てる年間体験プログラム。
「自分で育てたお米を自分で食べる」贅沢を。