仁義 誠さん・幸枝さん
2018年に和歌山県西牟婁郡に移住した仁義誠さん幸枝さん。農業や畜産、そして山仕事に携わりながら暮らしています。住まいの一軒家はちょっとリフォームして憧れだった薪ストーブを設置。燃料の薪は仁義さんが山の作業で調達しています。
生活や農作業で使う水は「とにかくきれい!」と、仁義さんが絶賛する自宅前の沢から引入れています。「雨の降った翌日はお風呂の水が濁ったりしますよ」と笑うご夫妻。挑戦と面白さ、人との縁、そして時にはシビアさも兼ね備えて暮らすお二人を囲む座談会です。
まず勉強。
何故こうなるんだろうって考えることの繰り返し。
―― 薪づくり・薪ストーブに興味があります。
仁義:山仕事ね、結構危ないんですよ。僕も危ない思いをそれなりにしていて、何かあっても自己責任になるから、それはもう非常~っに勉強しました。数を経験しないと駄目ですね。僕は木を伐る度に検証して、何故こうなるんだろうって考えることの繰り返しです。人に比べたら作業は遅くなるんですけど、最近はと人から「仁義さん、今ものすごく上手くなってるよ!森林組合さんより上手いよ!」なんて言ってもらえてね。ほんまかどうか分かりませんけど笑。なので今はちょっとずつちょっとずつ、危なくない範囲で量をこなしつつ勉強しているところです。
でも、薪ストーブに薪をくべられる瞬間っていうのは、僕にとって最高の瞬間なのでね、早く冬来ないかなって思ってます。
この木は50年後どうなってるんだろう。
そう考えて、一本と向き合う。
―― 木の伐り方や倒し方はどうやって勉強されたんですか?
仁義:まず実地ですね。それと本を読みました。日本の方法だけでなく、ドイツの方法だったりとか。なんせ興味があるのでたくさん読み漁りました。
木ってだいたい谷側に傾いてるんですよ。なので谷に倒せれば一番楽なんですけど叶わないこともあるし、薪に使うんだったら良いんですけど、建材に使いたい場合は、谷の向きに倒すと倒れる時間が長い分速度が付くので、木の中にヒビが入ってしまって建材としては不適合になるんです。だから必ず山の斜面側に倒すってのが建材には必要になります。そうなってくると、かかり木と言って、倒した木が他の密集している木にかかってしまうので、ひとりで作業をしていると難儀なことになるんですよ。
それをね、倒せるようになるように道具を集めたり、教えてもらって実践していくわけです。
それと僕が木を伐るときは、目の前の一本だけでなく隣の木も見て「この木は50年後、これくらい大きくなっているだろうから…」っていうように考えて伐ります。僕が去年伐った木は30本くらいで、人よりゆっくりですけど、ただただ伐ってしまうんじゃなく、山を育てることを考えて慎重にやるようにしています。
―― 女性には林業は難しいですか?
仁義:ひとりでは厳しいかもしれませんが、2・3人でやればできると思います。
最近は道具もいろいろあって、油圧式のチェーンブロックとかを使えば重い木も動かすことができますしね。
7年後の姿を楽しみに。
―― 原木シイタケに興味があります。
仁義:僕は、原木になるクヌギなどを持っている人に声をかけてもらって、木を伐って菌を打って、それを分けてもらっています。もっぱら自給用なんですが、食べても食べても出てくるから、収穫を忘れてものすごく大きくなってしまうこともあります笑。
この前、クヌギの実を拾って来て自宅の敷地に植えました。今ちょうど80本の苗が20~30センチくらいになっていて、ゆくゆくは20本くらいのクヌギが立つように間引いていく予定です。7年後にはじゅうぶんのサイズの榾木(ほたぎ)になるように今から育てていきます。
片手間にならないよう、昔の人の教えに沿って。
―― 農と山仕事を両立させた暮らしは可能でしょうか?
仁義:農業も山仕事も、ってなると農業が片手間になってしまうので、僕の場合は農業がメインで、冬の農閑期に山に入ってるっていう感じですね。ガッツリ林業をしていると両立は無理だと思います。昔の人の教えの通り“農作業でできることがないから山に入る”っていうくらいの方が良いと思います。
それと、自分でルートを開拓してっていうなら別ですけども、今は木を売ってもお金にはならないので、僕は薪にするとか、製材して小屋を作る角材にしておくという形で山の仕事をやっています。
自給自足は道なかば。少しずつです。
―― 自給自足のリアルな話を聞かせてください。
仁義:僕は畜産の現場に関わっているので、実は肉に困ることはないんですよ。魚を食べようと思ったら家の前の川でアユを釣ったりね。漁協関係の方から魚を頂くこともあるので、食生活はかなり豊かなんじゃないかなと思います。
調味料なんかはなかなか作れないですけど、それでも自分たちで作った黄からしでマスタードを作ったら最高に美味しかったんですよ。でもまだ生活の半分も自給自足にはなってないなぁ、というのがリアルなところです笑。
自分たちの暮らしと、地域のつながり。
その両方を考えること。
―― 地域活性化ってどうしていますか?
仁義:地域活性化ってふたつあると思うんですね、経済的な活性と、賑わいっていう意味と。それでいくと僕がお話できるのは賑わいの方ですね。妻の幸枝さんが月1回やっている山のカフェで、自分が栽培しているものでランチを出したり、自家焙煎のコーヒーを提供していて、最近は結構な人が来てくれています。
幸枝:来てくれるのは同じ町内の人が多いです。遠くても隣町の方ですね。
もともとは紀伊ジョウロウホトトギスっていう絶滅危惧種の花を復活させようっていう思いがあって、花の咲く10月だけ住民のみなさんで開催するカフェだったんです。でも、移住者の人たちが頑張ってるんだから協力してあげようって来てくれる地元のおじいちゃん・おばあちゃんが多くなりました。
おじいちゃん・おばあちゃんたちは、年代的にカフェにコーヒーを飲みに来る習慣はあまりないみたいなんですけど、今はスマホを買った高齢者の方のための教室をやったりして、みんなの憩いの場になったらいいなっていう思いがあります。
こういった限界集落で、このコロナの時代の中でカフェ継続していくべきかという課題も実はあるんですが、今は何よりもやり続けることに重きを置いて続けています。
―― どうして月1回開催にしているんですか?
幸枝:毎週開催してもそこまで集客がないことと、まず自分たちの生活が成り立たないとっていうことがあります。
野菜もお米もまず自分たちのものをつくる前提があって、そのうえで余力があればカフェで提供するっていう考え方です。やっぱりある程度余力を残しておかないと、全てが手つかず、中途半端になるなという思いです。
ありがたいことに、観光のガイドブックとか新聞でも取り上げてもらって知名度もあがってきてるんですけど、儲けを考えてるっていうのじゃないからボチボチであれば良いです笑。
来られた方ひとりひとりとのコミュニケーションを大切にしたいし、地元の方の憩いの場でもあるので、その思いを大事にしていきたいです。
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